労働者性とフリーランス

コロナ感染予防によるテレワークの拡大、または、政府の副業の推奨や、委託業務の仲介事業者の知名度アップなど、働く環境の変化を受けて、業務委託で仕事を受注するフリーランスで働く形態が定着してきています。ただし、フリーランスが業務委託で受注していても労働者性があれば、労働者と判断し、労働基準法や労働者災害補償保険法、労働安全衛生法、労働組合法などが適用されますから、どちらの契約形態なのかは慎重な判断になります。

 

1.フリーランスのガイドライン

政府は、2020年7月17日付けの成長戦略実行計画で、兼業・副業、フリーランスなどの多様な働き方への期待が高くなっている反面で、取引先とのトラブルや年収面、社会的な補償の整備の問題を考慮して、ルールを明確にしたガイドラインを示すとしていました。

その成長戦略実行計画の流れで、2020年12月には、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」の策定案を公表し、2021年1月25日までの期間に広く国金の意見(パブリックコメント)を募集しています。

ガイドラインは大きく分けて3つの項目、

・フリーランスと取引先間の公正な取引に関すること、

・仲介事業者が遵守すべきこと、そしてあいまいになりやすい

・現行の雇用関係とフリーランスの違いを示しています。

 

3つ目について注目しなければなりません。一見フリーランスと思える契約であっても、実態をみると雇用関係が成立している場合があります。よって、労働者かフリーランスなのかの判断は、適正に運用しなければならい背景があります。そこで、労働者性を判断する要素を示して、実態が労働者であればフリ―ランス委託契約をできないことを示しています。

例えば、筆者のまわりを見ると、ウェブ制作会社でイラストを描いている社員を新型コロナ感染症防止のため、昨年の春からテレワーク勤務に切り替え、10ケ月間ほどが過ぎると、業務委託契約のフリーランスのほうが実態に合っているようなケースも出てきています。このようなケースでは、今後の契約を検討する必要性があると感じていますが、慎重に検討するようにお願いしています。

 

2.労働者性の判断

では、労働者とフリーランスの判断要素をガイドライン案から見てみましょう。ガイドライン案は、フリーランスが業務委託で受注していても労働者性があれば、労働者と判断し、労働基準法や労働者災害補償保険法、労働安全衛生法、労働組合法などが適用されるとしています。

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しかし、労働者性がなければ、フリーランスの保護は、独占禁止法や下請法等を広く適用するという論法のようです。よって、労働者性を検討しますが、それは使用者従属性を認めるか否かであるとしているため、使用者従属性の判断基準を示しています。

使用者従属性が認められるか
今回のガイドライン案は以下のように、昭和60年12月19日に労働基準法研究会報告書で示された基準を採用しています。そうした意味では、従来と変わった点は見られません。
(1)「使用者従属性」に関する判断基準
①「指揮監督下の労働」であること
a.仕事の依頼、業務従事の指示等に関する諾否の自由の有無
b.業務遂行上の指揮監督の有無
c.拘束性の有無
d.代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素として)
②「報酬労務対償性」があること

(2)「労働者性」の判断を補強する要素として
① 事業者性の有無
② 専属性の有無

 

3.労災の特別加入

労災保険には、特別加入制度があります。中小企業事業主や、建設業の一人親方や、海外赴任者が特別加入できます。フリーランスについても、特別加入できるように検討をしているようです。

 

以上、ガイドライン案は、パブリックコメント等を経て正式に公表されると思われますので、一読をお願いいたします。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000211605