労災保険給付の確定までに時間がかかるとき

被保険者が業務上の理由であるものか判断がつかない場合、労災の給付の請求を行った後に、労災の給付決定がされるまでの間に健康保険の保険者に「療養費」「傷病手当金」等の保険給付を請求する事例があります。影響がある部門として、労働基準監督署と、社内では人事や健保の複数の部門にわたるやっかいな問題です。

被保険者が業務上の理由であるものか判断がつかない場合、労災の給付の請求を行った後に、労災の認定が確定していないことを理由に健康保険の保険給付の申請を受理しないことは認められないとしています(平成24年6月20日厚生労働省保険局保険課から発出健康保険組合あて 事務連絡)。

これを事象で解説すると、健保組合等の保険者が保険給付の請求を受理しなかったために、労災保険給付が不認定となった時、「労災からでないのであれば、それでは・・健保から」と思い保険者(=社員)が健康保険組合や協会けんぽに傷病手当金を請求したとします。

傷病手当金を受けることができる権利は2年を経過したときに消滅します。ですから労災の給付認定が出るのを待っていた結果、2年の時効により健康保険組合の給付請求権が消滅してしまう事例があり、健保の被保険者(=社員)は給付を受け取れなくなりますので、これを防ぐためです。

さきほど紹介した平成24年6月20日の通知では、労災の認定が確定していないことを理由にして、保険者は傷病手当金等の請求を受理しないことはできない。としているにとどまっていますので、保険者がすぐに給付をするかどうかまでは言及していないと考えるのが妥当でしょう。

これらのケースで健康保険組合等の保険者が労災決定を待たずに給付を実行するならば、労災の給付を受け取れるときには返金をする旨の確認書などを差しいれてもらうことをお勧めします。