この度の台風19号により被害を被った皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。
企業の施設が直接の被害を受けしばらく休業を余儀なくされるとき、又は交通機関の計画運休で、前日から事業の休業を決めて臨時休業をするケースもありました。
被害の規模は差があると思いますが、休ませた社員の賃金や休業手当を支払うかどうか、参考にする解釈を紹介します。
労働基準法第26条は、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合には、休業手当(平均賃金の60%以上)を支払わなければならないとしています。
ただし、天災地変等の不可抗力の場合は、「使用者の責に帰すべき事由」に当たらず、休業手当の支払い義務に当たらないとしています。台風で施設等が直接被害を受けて社員を休ませた場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず休業手当を支払う義務がないことが多いと思われます。
ここでいう不可抗力とは、
- その原因が事業の外部より発生した事故であること
- 事業主は通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること
の2つの要件を満たすものでなければならないと解されていますので、個別に検討してください。
では、直接の被害がないけれども交通機関が止まったり、仕入れ先が休むことから臨時休業を決め社員を休ませた場合、賃金はどのようにするのでしょうか。
これについては、平成30年に厚生労働省が労働基準法等の解釈をまとめて公表しているものが参考になります。(文末URLのQ1-4または5を参照ください)
これも、さきほどの2つの要件を満たすものであったならば、「使用者の責に帰すべき事由」に該当せず休業手当の支払義務に該当しない。としています。よって、この場合も休業手当の支払い義務に該当するか否かは、使用者が回避を具体的行ったかどうかや、回避することができたかどうか等を総合的に判断する必要があります。
また、就業規則を確認することも必要です。もし、天災等の場合であって不可抗力によって社員を休業させる場合であっても、通常の賃金を支払う。と規定しているような場合は、規定のとおり通常の賃金を支払う必要があります。
そして、企業の多くは、今後の社員のモチベーションを考えて、通常の賃金を支払うところがあると思います。
平成30年台風21号による災害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/201809272046-1.pdf